共鳴しあう2つの物語~「鬼滅の刃」と「大江山鬼退治」
この記事はネタバレを含みます。
日本一慈しい鬼退治「鬼滅の刃」。
物語のベースとなっている「大江山鬼退治」との共通点をまとめました。
知っているか知らないかで物語の楽しみ方が変わるかもしれないですよ。
「大江山鬼退治」とは
平安の昔。
帝の命を受けた源頼光一行は、京を騒がす鬼・酒呑童子を倒すため大江山に向かう。山伏の姿に扮した頼光一行は鬼の御殿で宴の席に招かれる。頼光は持参した毒酒で酒呑童子を酔いつぶれさせ、背負っていた笈(おい)から武具を取り出し、無事鬼の首を切ることができる。という物語。
鬼退治といえば「桃太郎」や「一寸法師」を思い浮かべるかもしれませんが、こちらも古くからある鬼退治の王道ともいえる物語です。能・歌舞伎・小説・ゲームなどなど数多くとりあげられています。
2つの物語の共通点
○酒呑童子の物語の舞台は平安時代。
鬼舞辻無惨が鬼になったのは平安時代。
○酒呑童子は美男子だったとの伝承がある。
鬼舞辻無惨は美男子として描かれている。
○酒呑童子は「鬼の王」と呼ばれていた。
鬼舞辻無惨は自身の後継者を「鬼の王」と表現した。
○源頼光は四天王をともない武具を入れた「笈(おい)」を背負っている。
炭治郎には4人の同期がおり、ねずこの入った箱を背負っている。
○源頼光は鬼の御殿へと招かれ、酒呑童子を倒す。
炭治郎たちは無限城に連れて行かれ最終決戦を迎える。
○酒呑童子は鬼を弱らせる酒「神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)」によって弱体化する。
鬼舞辻無惨は珠世の開発した「老化薬」によって弱体化する。
その他共通点
○同じく、頼光らの活躍として有名な「土蜘蛛」退治は「鬼滅の刃」に登場する「那田蜘蛛山編」での累との戦い。
○謡曲「土蜘蛛」には胡蝶という名の侍女が薬をもって登場する。
○四天王の一人、渡辺綱が退治する羅生門の鬼「茨木童子」のエピソードは吉原「羅生門河岸」に舞台を置き換えた「遊郭編」として描かれている。
○四天王の一人坂田金時(金太郎)は山奥で動物と一緒に育った伊之助のモデルのような人物。
まとめ
いかがでしょう。
令和に誕生した「鬼滅の刃」は、クラシカルな「大江山の鬼退治」の物語の構造をしっかりと踏襲して組み立てられていたことがわかります。これを理解したうえで読まないと、「なんか最後は珠代さんの薬でやっつけちゃったな。」と感じる方もいるのではないでしょうか。でもそこがミソなのよ。
「ドラゴンボール」は「西遊記」を。「ウエストサイドストーリー」は「ロミオとジュリエット」を。古典的名作に新しい命を吹き込み、大ヒットした作品は数多くあります。アダプテーションさせつつセンス良く元の物語をチラリズムさせるのも、作者の腕の見せ所です。
「鬼滅の刃」と「大江山鬼退治」。2つの物語を読み比べてみるのもまた楽しいと思います。